Cocytia・・・。(3)

 というわけで,蛾をめぐる19世紀流浪の旅が続いています。
 それにしてもコーキューティアの画像がさっぱり見つからない。南半球の蛾。


 フクラスズメの旧学名のための地下作業でこんなことになるなんて,全くの想定外である。知識を得るには人生はあまりにも短い。
 訳出を続ける。〔 〕は訳者註。ピリオド改行。原文の段落には〔P〕を入れる。


 Cocytia属は現在でも有効で,サイト「Catalog of Life」では7種が記載されている。ヤガ科である。
 (2)で述べたように,命名者のボワデュヴァルはこの属をマダラガに分類している。さて,1899年。


 ◎ D.Sharp,The Cambrige Natural History,vol.6,1899

 第10科。コーキューティア科〔Cocytiidae〕。−−1属1科。3,4種のみ知られている。ニューギニア地域原産で,最初の個体はほぼ100年前,デュルヴィル〔d'Urville。フランスの探検家。参照:Wikipedia〕によってもたらされた。

 未だ非常に希な昆虫である。
 生活史については知られていない。

 ヤガには見えない。マダラガかスズメガに見える。胴体から顔付き,特に下唇鬚はヤガ的。

 外見は,スズメガとマダラガ科を多少思わせる。
 バトラー〔Arthur Gardiner Butler。イギリスの昆虫学者。参照:Wikipedia〕はこの科について,雄雌で大きく異なる下唇鬚と,カストニア科〔Castniidae。東南アジア・オーストリアに分布する蛾。参照:Wikipedia〕やセセリチョウ科を連想させる触角によって特徴づけられるとする〔原註:Transactions of the Entomological Society of London,1884,p.351〕。
 翅の形,透かし模様,色彩はスズメガのヘマリス属〔Hemaris。タイプはクロスキバホウジャク〕を見る人に鮮やかに思い起こさせる。
 翅脈はヘマリス属に多少似てはいるが,マダラガ科に見られる特徴を有している。
 バトラーは,この科をアガリスタ科〔現在はAgaristinae としてヤガ科の1亜科とされている。画像は Don Herbison-Evans による「Agarista agricola」参照〕と,マダラガ科の間に位置づけている。

 さてそういうことで,次は当ブログ常連のバトラー先生へ。