Cocytia・・・。(11)

 続き続き。
 というわけで,フランス国立図書館の「Gallica」で Boisduval,「Essai sur une monographie des zygénides : suivi du Tableau méthodique des lépidoptères d'Europe」,1829。Cocytia の初出本である。
 実はこの『マダラガ科モノグラフの試み』には命名の由来は書かれていないのだが,せっかくなので関係部分を訳出する。
 蛾屋さんたちの中で自己紹介する機会があれば,「19世紀の蛾をやっています」とか言い出しそうな自分が,少し嬉しい。


 前書き。pp.II〜III

 コーキューティア属〔Cocytia〕に関して,その幼虫はまだ知られていない。思うに。幼虫を注意深く調べたならば,この属はマダラガの横に置かれることになるだろう。
 〔P〕
 とはいえ,昆虫学の第一人者にしてこの手の問題の重鎮であるラトレイユ氏は,コーキューティア属について,セセリチョウ〔hespria〕とウーラニア〔urania〕の隣,あるいはカストニア〔Castniaires〕族の,コロニス〔coronis〕とアガリスタ〔agarista〕の横に置くのがふさわしいと考えている。


 さて,註。画像はすべてBHLから。


 セセリチョウは知ってるだろうから略。


 ウーラニアは,現在のツバメガ科Urania属のこと。ナンベイツバメガとでも訳しておけば分かりやすいか。

 (J.G. Wood,Insects abroad,1883,から「Urania orientalis」,p.645)
 要するに,南の島の美麗種である。
 ところで,この Urania orientalis のデータをネットで探しているが見つからない。名前が変わっているに違いない。


 カストニアも,日本にいないやつ。現在はスカシバガ上科で,ヒロハハマキモドキ科とスカシバガ科の間におさまっている。

 (J.G. Wood,Insects abroad,1883,から「Castnia zerinthia」,p.649)


 コロニスは,現在は,シャクガ上科でツバメガ科とシャクガ科の間の Sematuridae 科の,Coronidia 科。

 (F.D. Godman & O. Salvin 編,Biologia Centrali-Americana :zoology, botany and archaeology,から「tab.41」)
 13:Coronidia canace  (現,Homidiana canace)
 14:Coronidia ribbei  (現,Anurapteryx ribbei)
 15:Coronidia echenais (現,Homidiana echenais)
 17:Coronidia interlineata (現,Anurapteryx interlineata)
というわけで,この図版のコロニディアは全滅しています。現コロニディアを探す元気は今のわたしにはありません。調べ疲れです。
 ついでに,
 12:Simena luctifera (これはエダシャクの類。タイプはメキシコ産)
 16:Urania fulgens (ウーラニアの色つき図版)


 次はアガリスタ。もうネット上の蛾探しに疲れてきました。帰宅して,パソに向かって4時間が過ぎています。
 現在は Agarista といえばヤガの「トラガ属」(日本にはいません)なのだが,ボワデュヴァルはおそらく現 Idalima 属(これもいません)を考えている。
 図版もさっぱり見つからなくて。

 (Hampson,Catalogue of Lepidoptera Phalaenae in the British Museum」,vol.9,1910,から「Idalima affinis」p.462)
 あんまりなので外部リンク。
 「Encyclopedia of Life」から「Idalima affinis Boisduval 1832」。
 結構いい蛾だねえ。


 次回は,これの続き。ラトレイユ大先生の出番です。