Cocytia・・・。(19)

 リトレを調べると,disque は “Terme de zoologie. Partie de l'aile des insectes qui se trouve comprise entre les bords.” などとある。
 こんな用語が載っているだけでもさすがリトレなのだが。「昆虫の翅の,縁の間の部分」って,そんな日本語の用語はわたしは知らないよ。
 どうしようもないなあ。「周縁部を除いた翅全面」とでも訳そうか。


 というわけで,ずいぶん久しぶりの Cocytia 。
 前回はどーなっていたんだっけという方は見出しの所の[Cocytia]タグをクリックしてください。
 Boisduval,「Essai sur une monographie des zygénides」,1829,「Gallica」から。
 コーキューティア・デュルウィルリイーのフランス語記載文。

〔P〕この美しい鱗翅類は sphinx lineata〔現,Hyles lineata。http://www.inra.fr/internet/Produits/PAPILLON/sphingid/texteng/h_lineat.htm 参照〕くらいの大きさである。
その第1翅は三角形で,周縁ぐるりが黒色。周縁を除いた翅全面はガラス様,光沢を帯び,翅脈が通る。翅脈は周縁部と同色。それ以外には,〔p.23〕同じ翅の付け根近くに美しい黄色い斑があり,片側は透明な部分で,逆側は基部の黒色で境界となっている。
各翅脈の間には,周縁部の色の中から黒い線が放射状に伸びており,翅の中央まで続く。この線は翅脈自体より少し太く,針状に尖って終わる。
〔P〕裏は,色合いが総じて明るい以外は,表と同じである。
〔P〕第2翅は丸みを帯び,黒く,ガラス様の全面と翅脈間の針状の線を持つことは第1翅と同様である。翅の基部に向かって,表では黄土色の,裏では鮮やかな黄色の斑がある。この斑は上翅の黒い周縁部に隠されているが,裏から見ると,第1翅の斑と重なり合う。
〔P〕触角は黒く,これは唇鬚の第3節も同じである。胸背と肩は,暗い青色とよく輝く青緑色の短い毛束で飾られている。胴体,顔面,胸部,腿も同じ色。腹部はよく輝く深い青緑色である。
〔P〕この新属はニューギニアに産し,森の中を日中飛ぶ。
〔P〕この属は現在まで,昆虫学的に最も稀少なものの一つである。デュルヴィユ船長は,フレイシネ〔Freycinet〕船長の下での,世界周航調査時の3個体しか報告していない。

 最後の下り,デュルヴィユは,フレイシネのユラニー号の乗員としては不採用になっているはず。彼がコーキューティアを採集したのはデュプレー船長下である(参照:WikipediaJules Dumont d'Urville」)。


 次回は『Voyage de Découvertes de l'Astrolabe』から。