札幌出張2日目。

 日付がおかしくて,曜日が合わない。どこかで間違えているのだがどうでもいいや。わたしにとって大切なことでも何でもない。
 ホテルの朝食。レストランには7〜8人いて,すでに何かを食べている。彼らもまた同じようなカードキーを持っているのだと思うと,嘔吐をもよおすような不快感がこみ上げてくる。こういうのがダメ。当然のように管理されてしまうことへの嫌悪感で胸が一杯になる。
 もちろん自由なんて信じていない。わたしはスピノザの落下する石でしかない。それでもあの磁気カードはどうしようもなく醜く愚劣だ。 
 

 窓から見える風景。窓が割としっかり開く。飛び降りてやろうか。2Fの部屋だけどね。
 

 洗濯ひも。事前に分かっていれば衣類の替えは鞄に詰めなかった。昨夜は下着もワイシャツもすっかり洗った。部屋はどこまでも乾燥していて,朝にはどうしようもなく衣類は乾いていた。
 
 本業の研修会。偉い人の挨拶が続く。話す側も聞く側も,どちらも不幸である。
 講演は元スポーツ選手のそれが偶然2つ続いた。一人はケガを乗り越えて金メダルを取って現在指導者をしている人。もう一人は直前のケガでオリンピックに選ばれずに,再起後に国体優勝を1回したものの結局引退勧告されて会社員をしている人。勝利者のことばのそらぞらしさ。
 
 研発。嫌な話。わたしの仕事は生徒の理性を動かすことだと思っている。どんなに有効であろうとも,情緒を揺さぶろうとするアプローチはあってはならない。オマエの人間観はおかしい? いいよ,ダメ教師で。
 情念は人間を操るものでしかない。他人を操作することの片棒を担ぐのは嫌だ。つくづくこの仕事に向いていない。だが「何かに向いている人間」がいたとすればそんな奴はきっと嫌いである。
 
 雪。あなたの後を付いていくどころか,特急はどんどん遅れていく。フロントについた雪を除去したり,他の電車と線路をすりあわせたり。読書ははかどるが,頭の疲れも尋常ではない。若い頃の集中力はとっくにない。
 自由席で立ち乗りの人たちはさぞかし大変だろう。隣の席の少女はイヤホンを耳に刺して,PSvita音ゲーをしている。
 
 1時間遅れて帰遠。顔と名前が一致する数少ない同僚と乗り合わせていたらしい。向こうがわたしに気付いたかどうかは分からない。わたしから先に声をかけて挨拶することはない。
 汽車の中で充分に体は温まっていた。夜の空気はそれほど厳しくない。帰り着くまでは寒さに震えることはないだろう。むしろ,家の水道の凍結が心配だった。水を落としていても,凍り付くときは凍り付くのである。