Parectropis属更新。シロモンキエダシャクやらハフナゲルやら小麦粉やら。

 HPのParectropis属更新。http://yyzz2.sakura.ne.jp/name/Ennominae/Parectropis.html
 
 何のことはないParectropis similaria(シロモンキエダシャク)であるが,今回(わたしにとっては)新しい発見。
 
 かつてブログに書いたように,「similaria」を「similis」由来だと思っていた。「同じ,類似した」だから,要するに近縁種と似ているのだろうと思っていた。これが間違い。
 学名調べのスタートは原記載論文である。命名者はHufnagel。これがひどいもので『大図鑑』のシノニムリストにはsimilariaの語が出てこない。
 ハフナゲル(Johann Siegfried Hufnagel,1724-1795)はドイツの牧師で鱗翅研究家。ここまでは分かっている。後はよく分からない人物である。鱗翅のコレクションを作り,独自の分類体系を考えたらしい(リンネ『自然の体系』10版は1758年)。彼のコレクションと功績は忘れられ,多くの命名の先取が無視されたとのこと。この「P. similaris」は先取が認められた幸運な蛾の一つであるようだ。
 というわけで,『大図鑑』はダメ,サイト「Lepindex」もダメ。「Lepindex」のカードを解読して,Wikiから「Google Books」で無理矢理原記載文の載った雑誌『Berlinisches Magazin』を探した(HP参照)。
 あった。でもドイツのヒゲ文字である。「Der Semmelvogel」だとさ。
 活字がつぶれているし,ドイツ語の語彙が乏しいしで不正確だがおおよそこんな感じ。
 訂正希望。

16) Phalaena Similaria
小麦パンの蛾(Der Simmelvogel)。
淡い黄色地に,かなり沢山の斑点が茶色の帯をなしている。

 この記載で種を特定するのは大変だよ。
 「vogel」は蝶や蛾のこと。「Semmel」はラテン語の「simila」(小麦粉)由来の言葉で上質のパン(例の白パンだね)のことである。
 かくして,「similaria」=「simila + arius」であって,「similis」ではないことが明らかなのだが,普通,そんなこと分かるわけないよ。
 また役に立たない知識が増えた次第。