手元の資料で調べよう。フレデリック・ムーア。(その19)
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というわけで,「Lepidoptera Indica」の記載リストの貼り直し。こんなに「L_I」に深入りするとは1年前は夢にも思っていなかった。
Lep_Ind_List完成版.xls
フリーのLibreで作ったものなので見映えがおかしくなっているかも。でも高価なOfficeを買う気は全然しない。
ご覧になっていただければ分かるように,属レベルでのシノニムまみれである。
ムーアの学者としての良心は知るよしもないので,あえて勘ぐれば,(しばしば高位の人物から)せっかく送られてきた蝶を亜種のオーダーに落としたくない(それでもかなり落としているのだが)心情があるのかもしれない。
フルストルファーの「Ent.Wbl.」では(1参照),次のように述べている。
ムーアは相違点への非凡な眼力を持っていた。彼の時代には,それらの相違点を正しく評価するにふさわしい厳密な感覚が育ち始めてきていたのだが,そちらは彼に欠けていた。
地方亜種を種に分類し,亜種のグループ,すなわち種なのだが,それを属としたことも稀ではない。
このことは彼の責任であるというより,彼を支配していた不変説の責任だろう。
彼が結局引き起こしたのは不要な細分化である。しかし彼の有能さが以前の学者たちのタイプ定義に大波をもたらす。
分類というのはDNAを用いようとも,最終的には人間の引く線引きにかかっている。進化論に与しなかったムーアにとってはなおさら人間のイデア的な感性に分類は負うところが大きかっただろう。
少しを見ていこう。あまり沢山でもしんどいので,Parnassius(ウスバアゲハ)あたりで。
亜科Parnassiinaeはとりあえず現在8種。しかしムーアが「LI」に記載している4属はすべてParnassiusの1属に併合されてしまった。
まずムーアによるParnassius。
Parnassius Jacqumontii。vol.5. Pl.406. http://www.biodiversitylibrary.org/item/103496#page/314/mode/1up
次はTadumia acco。
現 Parunassisus acco。vol.5. Pl.411. http://www.biodiversitylibrary.org/item/103496#page/325/mode/1up
Kailasius Carltonius。
現 Parnassius charltonius。vol.5. Pl.411. http://www.biodiversitylibrary.org/item/103496#page/325/mode/1up
Koramimus Stoliczkanus。
これははっきりしないが,Parnassius delphiusの亜種であるらしい。vol.5. Pl.412. http://www.biodiversitylibrary.org/item/103496#page/327/mode/1up
こんな調子である。蝶屋ならぬ身にはほとんど同じに見える。逆にいえば,これを属レベルで区別するってすごいとも言える。
この記事もそろそろ終わりに近づきつつある。