Cocytia・・・。(6)

 酋長して,じゃなくて出張して見田宗介の講演を聞いたりしたのだが,これがもう大変で,わたしがもう20才若ければ途中で席を立っていただろう代物だった。
 老醜をさらす前に沈黙したり死んでしまうことはなるほど大切であると,よーく分かった1月だった。


 そんなことはどうでもいいや。人類の未来なんて無関係である。200年前の,現代ではほとんど無効になってしまった蛾に関する知識の話の方がわたしには親しい。
 さてさて(わたしの主治医の口癖である),バトラー先生の「The lepidopterous genus Cocytia」の続きである(前回は1月3日記事)。

 現在知られている属は1つで,今のところ2種で構成されている。そこにわたしは3種目を付け加えねばならない(この記述のために友人のウォルター・ド・ロスチャイルドから借りたものである)。この種はヴィーチ氏の採集人であるチャールズ・カーティスがバチャン島で捕らえたもので,ロスチャイルド氏の依頼により,わたしは C.veitchii と命名した。

 *ロスチャイルド(Walter de Rothschild)については,Wikipedia項目「ウォルター・ロスチャイルド」参照。
 *ヴィーチ(Veitch)商会はイギリスの園芸商。カーティス(Charles Curtis)はランのプラントハンター。サイト「Park Town」内「用語集(あ〜お)」の項目「オーキッド・ハンター」参照。
 *バチャン(Batchian)はインドネシアの島。WikipediaBacan」参照。画像検索するとクワガタムシばかり出てくる。

 コーキューティア3種の特徴は次の点で最も明確に示しうるだろう。


a.翅は白く透明,縁の黒は幅が広い。黒い翅脈は外側の縁で太く徐々に細くなる。前翅の基部の赤みがかったオレンジ色の紋は大きい。
 ・・ ・・ C.durvillei。

 せっかくだから,前回に紹介した,岸田「ハナムグリガとクマバチモドキ」,2000 と比べてみよう。150年ぐらいのタイムラグは,どうということはない。以下,この論文からの引用は青字で行う。

1. Cocytia durvillii durvillii Boisduval,1829 (Figs 9-1,2)
 ニューギニア島に分布。松香宏隆氏の私信によると,現地の採集人の間では幼生期も判明しており,飼育によって標本を得ているようである。雌雄の差はほとんどないが,♀は♂に比べて翅が丸みを帯びることで区別できる。

b.翅は白く透明,外側の黒縁は狭い。翅脈はより細く,外側の縁から細いままで発出する。前翅の基部の赤みがかったオレンジ色の紋は小さく丸い。
 ・・ ・・ C.chlorosoma。

3.Cocytia durvillii chlorosoma Butler,1875 (Figs 9-5,6)
 アルー島の亜種。前翅基部の黄色部は発達が悪く,個体によっては黄色部を欠くものものもある。〔…〕

 アルー島については次回に。

c.翅は黄色く透明。外側の黒縁は狭い。翅脈はそのままの太さで発出する。基部の赤みがかったオレンジ色は大きい。
 ・・ ・・ C.veitchii。

2.Cocytia durvillii veitchii Butler,1884 (Fig 9-3)
 バチャン島の亜種。他の亜種より大型で,翅の色がやや黄色味を帯びる。

 みんな亜種になってしまったんだなあ。一応,2日記事の「Catalog of Life」では「provisionally accepted name」(何て訳すことになっているのだろう? 仮承認名?)扱いだが。


 まだ続くよ。わたしがまだ飽きていないもので。
 本当は,当ブログは単なるわたしの勉強ノートなんです。ごめんなさい。