Cocytia・・・。(13)
もはやフクラスズメなんてどうでもよくなって,当方の頭はマダラガであります。
つくづくブログという続き物に適さない垂れ流し型の媒体は,わたしの非体系的なゴミため状をした知の構造にぴったり適合していると思われるのであります。訳語が安定していないのも平気です。
というわけで,Latreille 先生の「報告」は例によって後回し。先にボワデュヴァルによる「概説」を見ておいた方が分かりやすいと思う。
「Gallica」で Boisduval,「Essai sur une monographie des zygénides : suivi du Tableau méthodique des lépidoptères d'Europe」,1829から。
〔 〕は訳者註。改行は任意に行っている。本文における改行には〔P〕を入れる。
〔p.1〕
概説
ラトレイユ氏はマダラガ族をこのように特徴づけている。
下唇鬚は短く,細い。円筒形あるいはつぶれた円筒形,ひげ状あるいはとげ状の毛に覆われ,第3節が際だつ。
触角は裸あるいは櫛ひげ。紡錘形あるいは牛の角状になる。
各属についての説明の前に置かれた「概説」。
「genre=属」・「tribu=族」と訳しているが,現代の分類体系なら「族」は「亜科」ないし「科」に当たるだろう。ダーウィン以前には分類において階層化を重視するかどうかは結構微妙で,分類者によって色々なのである。
〔P〕
sesia,thyris,aegocera,zygaena,syntomis,procris,atychia,glaucopis,agtaope,stygia が,この属を形成する。
現在では順に,スカシバガ,マドガ,トラガ,マダラガ,カノコガ,クロマダラガ亜科の Procerata 属,クロマダラガ亜科の Adscita 属,ヒトリガ科の Eunomia 属,ボクトウガ科の Stygia 属。
みんなマダラガ。石を投げればマダラガにあたる。しかも,リンネまで戻れば,みんなスズメガである。この世はスズメガ。
しかし,ここ数年来での昆虫学における幾多の発見,とりわけ中米から報告された鱗翅目の新種の数はおびただしく,このグループの数があまりに多くなったので,私はこれを3つに分けることにした。
〔P〕
SÉSIAIRES 族(この族の位置は,まだ実証的には定められていない)の中に,スカシバガ属,sphecomorpha 属,マドガ属をまとめる。
sphecomorpha は,現ヒトリガ科の Pseudosphex族。
ZYGÉNIDES 族の中には,〔p.2〕触角が棒状で,生きた幼虫が発見されているすべての種が位置付けられる。このようなものは,コーキューティア属,マダラガ属,カノコガ属,psichotoe 属である。
psichotoe は,現ヒトリガ科。
PROCRIDES 族の中に,その他,♂であれ両性であれ,触角が櫛ひげのものすべてをまとめる。
stygia 属については,最近その幼虫が発見され,わたしはこれをZEUZÉRIDES 族に位置付け,ボクトウガ属,zeuzera 属,コウモリガ属等と並べることにした。
zeuzera はボクトウガ科。
ボワデュヴァルの意図は,マダラガ族を絞り込むことにある。
〔P〕
トラガ属を注意深く検討した結果,わたしはこの属について,セセリチョウの近く,CASTNIAIRES 属の中に,agarista 属,coronis 属などと並べるべきであると依然考えている。
また,本著作の中で立てた hecatesia 属についても同様である。
hecatesia もトラガ亜科。かくしてボワデュヴァルはトラガをマダラガから除外する。
〔P〕
リンネは,いくつもの著作の中で,薄暮性の蛾類の種だけにスズメガの名称を与えていた。しかし,その姿や習性,とりわけ幼虫によってマダラガ族は見るからに全く異なっていることから,リンネはマダラガを sphinges adscitae〔外様の,の意〕とよんでいた。
〔P〕
その後,ファブリキウスは,現在ラトレイユ氏の薄暮性の蛾類を構成している鱗翅目を,sphinx,sesia,zygaena の3つに分割した。
ここら辺の事情については,当ブログ「09-02-21」記事参照。
死の少し前,『Systema Glossatarum』,これは未完の著作であって,そのため出版されなかったのだが,その本でファブリキウスは ノコギリスズメ属,aegeria 属,amata 属,glaucopis 属,procris 属を付け加えた。
aegeria 属は,現スカシバガ科のSesia 属。amata 属は,現ヒトリガ科。
過去に立てられたその他の属はみな,イリガーとラトレイユ氏によるものである。
Illiger はドイツの昆虫学者。この時すでに故人である。Wikipedia「Johann Karl Illiger」参照。
新顔の蛾の画像を探す余裕はちょっとないなあ。
次回はこの続き。