Cocytia・・・。(14)

 どうも〜。日曜蛾文献読み屋のyyzz2です。
 あー,続き。

以上のことから,マダラガ族は〔p.3〕このように減らされて,もはや4属しか含まれなくなるだろう。

 すなわち,cocytia ・ zygaena ・ syntomis ・ psichotoe。

 〔以下,マダラガから外れた aegocera ・ hecatesia ・ thyris〔マドガ〕各属が,それにもかかわらずこの『モノグラフ』で取り上げられている理由が述べられる〕
 〔乱暴に言えば, aegocera と hecatesia については,まだ知名度の低い蛾なので触れておきたいから。thyris については,幼虫や蛹の生態をせっかく調べたので発表しておきたいから〕

 我ながら乱暴だなあ。いいんだろうか。 (-_-;)

〔p.4〕
〔P〕
cocytia 属はマダラガ族の一番目であって,デュルヴィユ船長によってもたらされたニューギニアの非常に美しい昆虫から,わたしはこの属を立てた。

 コーキューティアについて,「概説」ではとりあえずこれだけ。
 以下,zygaena について5ページ,syntomis について2ページ,psichotoe について5行が割かれる。
 特別な希望があれば紹介するが,そんなものを読みたいという希望は普通はないと思う。あったとすれば嫌がらせを疑う。どうせ読みにくいよ。
 わたしもナナメにしか読んでいないのである。


 というわけで,やっーーとラトレイユ先生の,この『モノグラフ』報告へ行ける。
 そういえば,まだこの『モノグラフ』の構成を示していなかった。遅ればせながら。

  • 前書
  • ラトレイユ,ボス両氏による,1827年9月10日に科学アカデミーに提出され,『マダラガ族のモノグラフの試み』の表題をつけられた,ボワデュヴァル氏の原稿についての報告
  • 引用者一覧
  • 概説
  • GENRE HECATESIA
  • GENRE AEGOCERA
  • GENRE THYRIS
  • GENRE COCYTIA
  • GENRE ZYGAENA
  • GENRE SYNTOMIS
  • GENRE PSICHOTOE
  • 種名索引
  • 図版

 というわけで,リストの2番目の長いやつです。
 Boscについては,Wikipedia「Louis Augustin Guillaume Bosc」参照。この人もずいぶん革命で苦労している模様。


 さて,原題は「Rapport de MM. Latreille et Bosc sur un Manuscrit de M. Boisduval, prsénté à L'Académie des Science Le 10 Septembre 1827, et intitulé: Essai sur une Monographie de la Tribu des Zygénides.」である。
 p.IX から。
 始めは枕。

日々数え切れないほどの昆虫種が発見されている。全般的体系を作るべく,それらを良くグループ分けしたり,良く説明したりすることの困難さを見るにつけても,研究の輪を限定して,いくつかの類だけ,あるいは一つの種だけに関わる必要があろう。
一言で言えば,モノグラフとよばれる特殊な仕事が必要なのであって,それは自然科学における,一般地理学での地形学にあたるものなのである。

この真理に従って,様々な著者たちが,この点で,〔p.X〕昆虫学に多大な貢献をなしてきている。
しかし,これらの業績は,極めて深くかつ極めて詳らかなものではあったが,異名表と記載部分において,ほとんど必ずといって重要な不備を有している。
対象とする動物の習性について,何も示されていないか,あるいはほとんど何もないのである。さらに,これらの仕事の多くは,図版を欠いている。
しかるに,われわれがこれから報告しようとする著作は,これらの点において,批判の余地のないものである。

著者であるボワデュヴァル氏は,すでに医学に対する業績と情熱に対して様々な賞を受けてきており,『l'Histoire Naturelle des Lépidoptéres de France〔フランスにおける鱗翅目の自然誌〕』の著者である故ゴダールには多くの興味深い観察結果を提供している。
また,外国の学者と日常的に交流しながら,とりわけ熱心に昆虫界へ取り組み,その結果,デジャン伯爵の見事な昆虫コレクションの保護と管理を任されている。そして,8年間以上の生態研究を経て,今回出版の『マダラガ族のモノグラフ』までに至ったのである。
レオミュールやドゥゲーの方法にならって,彼は自然をその舞台の上で観察することから始める。このことが,彼に性差や多様性を見極めることを許すのである。

 ここまでは一応持ち上げておく。
 ここから批判が入る。アカデミズムは他人の意見にケチをつけてナンボの世界である。

われわれは,彼の提示する,リンネのスズメガ属に対しての変更には従わないだろう。〔p.XI〕
われわれは,ファブリキウスがスズメガのうちの多く(ジョフロワの sphinx-béliers)を固有の属として,zygaena の名称を与えたこと,この分離後さらに分裂して,今日ではこれらの属全体を,ファブリキウスの sésia と合わせて,zygénides 族としていることを,諸君に示すだけで十分であると考える。

 自分の考えた分類を崩されるのは不満である。それはそうだろうけどねえ。

ボワデュヴァル氏の考えは,マダラガ族は数が多くなりすぎたので,3つに分けるのが適切とするものである。
新たな2族は sésiaires と procreides と名付けられる。
sésiaires 族は,sesia,thyris などからなり,ボクトウガのように茎にもぐる。
procreides 族は,両性であれ雄のみであれ,櫛ひげ状の触覚を持つマダラガが入ってくる。
これに対して,本来のマダラガ族は,触覚が常に単純なものだけで構成される。
このようなところが,光栄にも諸君に贈られる『モノグラフ』の主題である。

 皮肉?

hecatesia,aegocora,thyris,cocytia,zyaena,syntomis,psichotoe の7属が,この本の内容である。
hecatesia はオーストラリアの一昆虫に対して立てられた属で,この植民地統治の事務総長であるアレクサンドル・マックレイ氏によって当学会員の一人へ送られたものである。
ボワデュヴァル氏は,この属の存在についてだけを,aegocera 属と同様に,〔p.XII〕付録の形で付け加えねばならないと考えた。正当にも,これらの属はシジミチョウの近所,アガリスタとコロニスのそば,カストニア族の中に置かれるべきであるとの疑念を持ったからである。
thyris 属は彼の『モノグラフ』にもはや入ってこない。しかし,彼はこの本を利用して,もっぱらこの昆虫の幼虫について紹介している。

 これも嫌みっぽいなあ。profiter(利用する)には「悪用」のニュアンスもあるんだよな。


 まだ続くよ。


 画像がないと寂しいのでおまけ。「BHL」
 Hübner, Sammlung europäischer Schmetterlinge, plate. v.2 から。

 リンネ分類の時代。

〔上段〕
Lepidoptera,II.   Sphiges,I.   Papilinoides,B. etc.
〔下段〕
137. Rubicundus.  138. Glycirrhizae.  139.140. Euphorbiae.

 現在は,137:Zygaena rubicundus,138:Zygaena trifolii,139.140:Hyles euphorbiae。
 こうやって,マダラガとスズメガが自然に共存させられているのを見ると,当時の人々は今とは違うものが見えていることを感じる。