リンネ『自然の体系』昆虫編について(3/ )。Dytiscus(ゲンゴロウ),

 『自然の体系』初版の鞘翅目のつづき。


(鞘翅目−2/22)
 訳出ではゲンゴロウで問題なし。わざわざ和名に合わせてゲンゴロウモドキにする必要はないだろう。外つ国では「モドキ」が本家だったというだけのことである。

  • Dytiscus〔「小さな泳ぐ者」の意〕
    • 後脚が櫂の形をし,櫂として用いられる。
    • 触角は剛毛を持つ。腹板の先端は二叉状になる。
      • Hydrocantharus.〔不詳。「水のハンミョウ」の意。〕
      • Scarab.〔Scarabaeus〕 aquaticus.〔不詳。「水のコガネムシ」の意〕

 このように,初版ではまだ二名法による種の命名は行われず,ラテン語の「種名」(これは1語のことも2語のこともある)を,属に分類するにとどまる。
 ゲンゴロウ2種は,一般名を単純にラテン語化したように見える。


 他の本からの図版を入れておこう。
 David SharpOn aquatic carnivorous Coleoptera or Dytiscid(水棲肉食甲虫あるいはゲンゴロウ),図版18;1882 から,Cybister属3種。

 左から,Cybister owas,C. limbatus(フチトリゲンゴロウ),C. japonicus(ナミゲンゴロウ)。