手元の資料で調べよう。フレデリック・ムーア。(その7)
(その1)・(その2)・(その3)・(その4)・(その5)・(その6)
『The Lepidoptera of Ceylon』の続き。今回は図版の話。
どれでもいいよね。第2巻のPlate.88。
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Pergesa Actues。この蛾は日本でも沖縄界隈になら分布している美麗種である。和名はミドリスズメ。「みんな蛾」ではhttp://www.jpmoth.org/Sphingidae/Macroglossinae/Pergesa_acteus.html。
ところで。
前回に書いたように,この本の図版のもともとはセイロン人の画工 de Alwis の手によるものである。ところが,ご覧の通り,“F. C. Moore”の署名しかない。彼は Frederic Moore の息子であり,他の著作の石版画も手がけている人物である。この3巻本のすべての図版の署名は彼のものであり,Alwis の名は序文にしか出てこない。
もちろん,アルウィスの絵は水彩であるから,石版に写す必要がある。ムーアがそうしたのだろうから,ムーアの名が入るのは当然としても,オリジナルたるアルウィスがどこにも出てこないのがまずい。連名だってかまわないはずである。
これはおかしいというので,いろいろな,<植民地支配問題>や<差別問題>の絡んだ話が出回る。(十分には文献を参照できず)。
最大限に善意に解釈すれば,「石版の出来映えがオリジナルに遙かに及ばないことをはばかって,あえて Alwis の名を出さなかった」ということらしいが,どうも怪しい。
わたし個人は,(やっぱり)「植民地政府鳴り物入りの出版物に,現地の土民の名前を大きく取り上げるのは具合が悪い」という相場なのではないかと勝手に思っている。
せっかくだから,ミドリスズメの原記載文の図版も。
Pieter Cramer,De uitlandsche kapellen, voorkomende in de drie waereld-deelen Asia, Africa en America,1775,Plaate.CCXLVIII。
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(この項続く)