ネグロウスベニナミシャクsp..エゾクシヒゲシャチホコ.ヒメヤママユ.カバエダシャク.

 昼はカメムシ,夜は蛾.こう上手くいけばいいのだがで,7時半出撃.


 いつもは奥の駐車場へ先に車を回すのだが,温泉看板に久しぶりに蛾影が見えた.まずこっちから.


 温泉看板は,黒い蛾とクリーム色の蛾.

 近づくと黒い蛾がいきなり飛び立った.しばらく目で追う.着地.落ち蛾になった.
 フラッシュで色が浮かび上がる.ああ,困ったな.憶えがある.同定不能の蛾だ.
ネグロウスベニナミシャクsp.
 ネグロウスベニナミシャクsp..「ネグロ」と「オオネグロ」との区別は翅の裏側を見ないと分からない.
 前翅長は22mm.堂々たるシャクガである.
ネグロウスベニナミシャクsp.
 せっかくの落ち蛾なので正面から.
 這いつくばって地面に向けてフラッシュを焚く不審者を,温泉帰りの人々が奇異の目で眺める.慣れているから平気.

 クリーム色の方の蛾へ.初見だが何となく分かった.クシヒゲシャチホコだ.「エゾ」とどっちだろう.
 少し暗めに写ったが,眼視ではもっと薄い色.柔らかい,いい色合い.いいシャチホコだと思う.
エゾクシヒゲシャチホコ
 調べるとエゾクシヒゲシャチホコ.前翅長17mm.横線が白くくっきりしていると「エゾ」である.
 駐車場の方で更に2頭.この時期が旬の蛾である.
 温泉看板に戻ると更に別の1頭.都合4頭.
エゾクシヒゲシャチホコ
 こちらは見事な触角を披露してくれた.ヤママユやドクガの密な櫛歯とは違って,TVアンテナというか魚の骨というか.
エゾクシヒゲシャチホコ
 晩秋仕様の蛾だけあって毛むくじゃらである.口吻はなさそうだ.あったところで食べ物が手に入る季節ではない.
 シャチホコガの記述に異彩を放つ,北隆館『コンパクト版原色昆虫図鑑 Ⅱ甲虫他』では,

卵越冬.春にカエデ属の若葉で育つ.幼虫は平凡なイモムシ.(p.12)

 何となく一言多いのが面白い.

 駐車場の掲示板横にヒメヤママユ
ヒメヤママユ
 そよ風に吹かれて,翅と体がゆらゆら揺れる.冷たい風.

 温泉看板下に蛾が舞い込んでくる.夏なら普通の光景が,今では涙が出るほどに貴重なものに.
カバエダシャク
 カバエダシャク.前翅長22mm.色合いは茶色っぽいものから,この個体のような白っぽいものまであるようだ.
カバエダシャク
 正面から撮ると,綿毛玉のようにまんまる.冬仕様である.講談社『蛾類大図鑑』によると,

体は毛におおわれ,頭頂の毛塊はやや隆起している.(p.558)

 簡潔.

 ・落ちクワコ.20mm.さあ,どこまでいけるか.


 夏場には及ばないが,今夜は蛾に恵まれた.
 きっと今シーズンは,もうこんな夜はないだろう.幸運な夜.