Moffet

『Theatrum Insectorum』の「蝶蛾」を読む。(5) 蝶蛾の名称について。

さて,これで,ようやくモフェットに入ることができる。 正式な本のタイトルは 『昆虫すなわち,より少さな動物の劇場。かつて,エドワード=ウォットン,コンラード=ゲスナー,トマス=ペニーから始められ,最終的にロンドンのトマス=モフェットの尽力によっ…

『Theatrum Insectorum』の「蝶蛾」を読む。(4) Index。

迷走しているのだけれども,考えなしに行き当たりばったり調べごとをしているので仕方ない。モフェット(Thomas Moffet 1553-1604)*1の『昆虫の劇場』(1634,死後出版)については発刊まで波瀾万丈の経緯があって,しかも複数の資料提供者たち(Wotton,Ge…

番外編。中世におけるワニチドリ伝説の発展について。(4/4)

(1)・(2)・(3) さて,ワニチドリの続き。次は1240年。Bartholomeus Anglicus の『諸物の特性について De proprietatibus rerum』。良きにつけ悪しきにつけ,ルネサンスで広く用いられた百科事典的自然誌本といってよい。 バルトロメウス=アングリク…

番外編。中世におけるワニチドリ伝説の発展について(3)。

(1)・(2) 相変わらず,ワニの歯を掃除するチドリの話の変遷史が続く。 本質的に行き当たりばったりでブログを書いているので,復習しながらじゃないと自分も分からなくなる。 前5C:ヘロドトス これがおそらく記載としてはプロト。ワニの習性とトロ…

番外編。中世におけるワニチドリ伝説の発展について(2)。

(1)のつづき。脱線中。ワニの歯を掃除するチドリの話の変遷史である。 ヘロドトス → アリストテレス → 大プリニウスからそして,といったバトンリレーのただ中。 次走者のガイウス・ユリウス・ソリヌス(Gaius Julius Solinus)は3世紀ローマの文法家,…

番外編。中世におけるワニチドリ伝説の発展について(1)。

3泊4日の卓球高校生引率@網走がやっと終わった。1泊2食で4千8百円。食事がかなり良い。昼間は高校生のわあわあ言う声とピンポン音の中で,Raven『English Naturalists from Neckam to Ray』を居眠りしながら読み進める。English Naturalists from Nec…

『Theatrum Insectorum』の「蝶蛾」を読む。(3)大プリニウスにおける蝶蛾の発生。

(1)・(2) 昆虫研究史は,前4世紀のアリストテレスから1世紀の大プリニウスへと,大プリニウスから16世紀のゲスナーへと三段跳びをする。間がずいぶんとあいている。この隙間隙間には光度の落ちる星々がなかったのではないのだろうが,詳細な史的研…

『Theatrum Insectorum』の「蝶蛾」を読む。(2)アリストテレスの昆虫論。

(1) 昆虫学は古代ギリシア最大の哲学者,アリストテレスをもって嚆矢とする。 アリストテレス以前の人間は,虫になどミツバチとカイコを除いて関心を持たなかった。まあ当然だね。アリストテレスは森羅万象を研究した人物であって,生命だの発生だのの研…

『Theatrum Insectorum』の「蝶蛾」を読む。(1)前置き。

さて,うん,これからまた長丁場。 しばらくは前置きが続くよ。人生の3分の2は前置きや準備だけに費やされ,そのほとんどが実りのないものに終わることがこの年になってつくづく分かったのはさておき。 − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − −…

Moffet『昆虫劇場 Insectorum theatrum』第2巻における無翅昆虫の体系図。

というわけで Moore と Moffet を平行して調べている。片方に集中するとしんどいからである。 例の Moffet の『昆虫劇場』は第1巻がミツバチから始まって有翅の虫,第2巻が芋虫毛虫(「キャタピラー」である)からハリガネムシまで無翅の虫を扱っている。 …

Moffet『昆虫劇場 Insectorum theatrum』の「Anthrenus」について(2/2)

(承前) ここからが本題である。 Anthreri Iconem vobis offero, quem Graeci etiam anthrênon apteron vocarunt. わたしは諸君にアントレノスの図版を示す。これをギリシア人は「翅のない蜂(アントレーノン・アプテロン)」とも呼んだ。 http://www.biodi…

Moffet『昆虫劇場 Insectorum theatrum』の「Anthrenus」について(1/2)

twitterでのわたしのつぶやきは「調べ事の進捗・更新の報告」か「身心の具合が悪い」かどちらかなので,およそ読まれるに値しない。とはいえ,その2つがわたしの生活の実質のすべてなので仕方ない。 先日何の気なしに画像を貼った。17世紀の虫本の,なん…