『Theatrum Insectorum』の「蝶蛾」を読む。(3)大プリニウスにおける蝶蛾の発生。

(1)・(2) 昆虫研究史は,前4世紀のアリストテレスから1世紀の大プリニウスへと,大プリニウスから16世紀のゲスナーへと三段跳びをする。間がずいぶんとあいている。この隙間隙間には光度の落ちる星々がなかったのではないのだろうが,詳細な史的研…

ケイさんからの虫メール。ヨトウガ。

もうこのブログに新しい蛾の写真が載ることはないだろうくらいに思っていたのだが,世の中は色々あるものだ。 当ブログのほとんど絶滅危惧種となった読者の稀少な一人である,神奈川のケイさんがメールをくれた。 彼は現在,「ケイの言ってみようか!」の管…

『Theatrum Insectorum』の「蝶蛾」を読む。(2)アリストテレスの昆虫論。

(1) 昆虫学は古代ギリシア最大の哲学者,アリストテレスをもって嚆矢とする。 アリストテレス以前の人間は,虫になどミツバチとカイコを除いて関心を持たなかった。まあ当然だね。アリストテレスは森羅万象を研究した人物であって,生命だの発生だのの研…

Phthonosema属更新。

HP更新。Phthonosema属。 昨日が「参観授業」で仕事だったので,今日は振替休日になった。例年通り2月3月は神経がボロボロだったが,これも例年通りに4月は「やや元気」な状態が今のところ継続している。朝から雪が降っている。車を出して灯油を買って…

『Theatrum Insectorum』の「蝶蛾」を読む。(1)前置き。

さて,うん,これからまた長丁場。 しばらくは前置きが続くよ。人生の3分の2は前置きや準備だけに費やされ,そのほとんどが実りのないものに終わることがこの年になってつくづく分かったのはさておき。 − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − −…

Phthonandria属更新。

HPでPhthonandria属更新。http://yyzz2.sakura.ne.jp/name/Ennominae/Phthonandria.html 。 エゾウスクモエダシャクの「emaria」が河川名だったことが収穫。 あまりつまらないので久し振りにようつべを貼ろう。 「宵に叶わず」。こういうのは好きなんだけ…

手元の資料で調べよう。フレデリック・ムーア。(その20/20)

(1) ・・・ (19) ムーアについては,かつて記したように,日本ではほとんど知られていない。19世紀の博物学に関する翻訳書が幾冊も出ているが,そこにムーアの名前が現れることはない。この事情は海外でも同じらしく,彼のことに触れている本がさっ…

HP更新。Peratophyga属・Petrophora属・Phanerothyris属・Phigalia属。

HPを更新。 Peratophyga属。 クロフヒメエダシャク。調べてみると未見だった。ありふれた蛾に思えたのだがなあ。命名者のKollarはこの蛾をIdaea属に分類している。Idaeaといえば,例のヒメシャクの類いである。ベニヒメシャクの色違いに見えないこともない…

手元の資料で調べよう。フレデリック・ムーア。(その19)

(1)・(2)・(3)・(4)・(5)・(6)・(7)・(8)・(9)・(10)・(11)・(12)・(13)・(14)・(15)・(16)・(17)・(18) というわけで,「Lepidoptera Indica」の記載リストの貼り直し。こんなに「L_I」に…

Parectropis属更新。シロモンキエダシャクやらハフナゲルやら小麦粉やら。

HPのParectropis属更新。http://yyzz2.sakura.ne.jp/name/Ennominae/Parectropis.html 何のことはないParectropis similaria(シロモンキエダシャク)であるが,今回(わたしにとっては)新しい発見。 かつてブログに書いたように,「similaria」を「simil…

手元の資料で調べよう。フレデリック・ムーア。(その18)

(1)・(2)・(3)・(4)・(5)・(6)・(7)・(8)・(9)・(10)・(11)・(12)・(13)・(14)・(15)・(16)・(17) 『Lepidopera Indica』はムーアの死によって中断された本である。ムーアが6巻まで。7〜10…

Pachyerannis属・Pachyligia属・Parabapta属・Paradarisa属・Pareclipsis属更新。

三連休じゃなくて明日明後日は出勤サービス時間外だから,休日。 今日は虫のことしか考えないぞで,朝からずーっとPC。 Pachyerannis属 http://yyzz2.sakura.ne.jp/name/Ennominae/Pachyerannis.html クロスジフユエダシャク。何がobliquariaだか一つも分…

手元の資料で調べよう。フレデリック・ムーア。(その17)

(1)・(2)・(3)・(4)・(5)・(6)・(7)・(8)・(9)・(10)・(11)・(12)・(13)・(14)・(15)・(16) ずいぶんのご無沙汰でした。だって心身ボロボロだし,仕事は泣きそうなほどだし。 資料読みは少しずつ続…

Ourapteryx属・Oxymacaria属の学名の意味。

HPの更新。 Ourapteryx属 http://yyzz2.sakura.ne.jp/name/Ennominae/Ourapteryx.html Oxymacaria属 http://yyzz2.sakura.ne.jp/name/Ennominae/Oxymacaria.html ほんとうに久し振りに,家にいられて出勤しなくてかまわない休日。 Mooreの「Thanksリスト」…

第42回みちのく会一関大会報告だいたい(3/3)。「話題提供」と帰路。

何だかよく寝た。6時起き。 帰りの飛行機の時間が心配である。バスの進行が信用できないからなおさらである。フロントで一関駅までのタクシーの予約。これで1時間早くバスに乗られる。 2日目は「話題提供」。何か発表である。 「蛾会最近の話題」。オフレ…

第42回みちのく会一関大会報告だいたい(2/3)。「一人一話」だよ。

「みちのく会」は「一人一話」から始まる。「一人一話」とは,自己紹介と活動・研究の報告を兼ねたもの。純粋な挨拶あり,最先端の報告あり。 その若干の紹介。 先日物故した杉氏の思い出話が数人から。 シャチホコのDNA。かなり面白いことになってきている…

第42回みちのく会一関大会報告だいたい(1/3)。会場につくまで。

というわけで,ほぼ身心の機能が停止中のyyzz2ですが,2月の最終土日に恒例とも因習ともいわれている「みちのく会」に行ってきましたのでありました。 「みちのく会」と言われても常人には何やら分からないに違いない。 ネット検索でヒットさせると,「みち…

Odontopera属・Ophthalmitis属・Orthocabera属追加。エダシャクの大きいのから小さいのまで。

HP更新。Odontopera属・Ophthalmitis属・Orthocabera属。 写真か図版はあった方が絶対にいい。Seitz,The Macrolepidoptera of the world : a systematic account of all the known Macrolepidoptera が図版の宝庫だと今頃知った。他に適当なものがない時…

Ocoelophora属追加。テンモンチビエダシャクについて。

HPにOcoelophora属追加。 http://yyzz2.sakura.ne.jp/name/Ennominae/Ocoelophora.html テンモンチビエダシャクなんて未見に決まっていると思っていたが,ブログ検索をかけると1度見ていた。完全に失念していた。 Ocoelophora属がどうにも謎の属で,タイ…

ケイさんからの虫メール。ナナフシ。ビロードスズメの図鑑批判。

虫を撮るのは現在ストップ。twitterのランに虫画像が流れているのを茫然と眺めているだけである。英語とラテン語とBHLのPDFの重さに死にかかっていると,神奈川のケイさんからメールが来ていた。落ちぶれ果てたわたしに虫の写真を送ってくれるほぼ人類…

ダメですね。MooreもNyssiaもケイさんとの約束も全然ダメです。仕事を終わって帰宅すると,脳がほとんど死んでいて集中力が消失しています。今度の日曜までまともなことは何もできそうもないです。銭湯に行く元気もないです。 4時には目が覚めているのだか…

「トゲシャクトリ」調査中。

ごめんなさい。体調ダメ。職場早退したし。 明治31年の文献に「トゲシャクトリ(Nyssia ssp.)」という記述が出てきて,これがクワトゲエダシャク。「Nissia」から調べ直し中。1901年のカタログではすでに属名が「Zamacra」に変わっている。こちらが当…

属名Nyssiodesの意味解釈。およびフチグロトゲエダシャクの和名「トゲ」に関する憶測。

HP更新。「蛾の学名の意味−エダシャク亜科Nyssiodes属」。 http://yyzz2.sakura.ne.jp/name/Ennominae/Nyssiodes.html この属で日本に分布するのはあの人気のフチグロトゲエダシャクである。 http://www.biodiversitylibrary.org/item/39816#page/103/mode…

Nothomiza属マエキトビエダシャクの学名の意味。

HPの更新。Nothomiza属の学名読み解き。 http://yyzz2.sakura.ne.jp/name/Ennominae/Nothomiza.html 平嶋『生物学名辞典』は蛾分がやや不足なのであまり活躍の機会がないが,とりあえず必ず参照する本。うまいこと「Nothomiza」が載っていたのだが,おかし…

手元の資料で調べよう。フレデリック・ムーア。(その16)

(1)・(2)・(3)・(4)・(5)・(6)・(7)・(8)・(9)・(10)・(11)・(12)・(13)・(14)・(15) 27.F.A.de Roëpstorff夫人(Mrs. Frederick Adolph de Roëpstorff) →デンマーク人なので名前の発音が分から…

Ninodes属ウチムラサキヒメエダシャク種の学名の意味。

HPの更新。Ninodes属の学名読み解き。 http://yyzz2.sakura.ne.jp/name/Ennominae/Ninodes.html あんまり色気がないので,BHLから版権切れ画像を入れることにする。ますます地味になったような気がする。 それにしても命名者は,どうしてこの小さな蛾に…

Myrteta属・Nadagara属更新。クロミスジシロエダシャクのよもやま。

HP更新。Myrteta属。http://yyzz2.sakura.ne.jp/name/Ennominae/Myrteta.html クロミスジシロエダシャクの学名はMyrteta angelica。東アジアの蛾である。 命名者のバトラーはわたしの印象として,あまりひねらないで第一印象で命名する人物である。「汚い…

Myrioblephara属の学名の意味。キバネトビスジエダシャクとチビトビスジエダシャク。

HPの更新。Myrioblephara属の学名読み解き。 http://yyzz2.sakura.ne.jp/name/Ennominae/Myrioblephara.html キバネトビスジエダシャクはともかく,チビトビスジエダシャクが少しいわく付き。ProutによるNovitates Zoologicae, v.35, 1929-30, p.335, の解…

手元の資料で調べよう。フレデリック・ムーア。(その15)

(1)・(2)・(3)・(4)・(5)・(6)・(7)・(8)・(9)・(10)・(11)・(12)・(13)・(14) 25.J.ウッド-メイソン博士,カルカッタインド博物館副館長(Dr. James Wood-Mason) →1846-1893。James Wood-Mason - Wiki…

Monocerotesaの意味。クロフキエダシャク。

HPの更新。クロフキエダシャクの Monocerotesa lutearia の学名読み解き。 http://yyzz2.sakura.ne.jp/name/Ennominae/Monocerotesa.html 属名について。トゲが1本あるらしい。幼虫のことかもしれない。Wehrli の記載文が「L'Amateur de papillons」なる…